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一人でも多くの鍼灸師を救え

平成17年4月1日

名誉会長 黒野保三

             

 「混合診療」について、小泉純一郎首相の諮問機関である経済財政諮問会議や、内閣府の規制改革・民間開放推進会議で行われた審議に加えて、具体的な審議が厚生労働省・中医協でも行われてきました。

 平成16年9月10日の経済財政諮問会議において、小泉首相が「混合診療を年内に解禁するように」と指示しました。そして、11月15日に開かれた経済財政諮問会議で、厚生労働省の主張を退ける姿勢を明らかにし、規制改革・民間開放推進会議や官邸サイドの攻勢は盛り上がってきました。このことにより、「混合診療解禁問題」が医療界を揺るがす大問題に発展してきました。日本医師会植松治雄会長は、混合診療解禁を阻止するため、植松会長の出身母体である大阪府医師会をはじめ主要都市の医師会が反対集会を開きました。さらに、混合診療解禁反対のビデオを制作し、日本医師会のホームページでも公開しております。そして、医療関係団体を集結して「国民医療推進協議会」を結成し、混合診療反対の署名運動を展開。厚生労働省も混合診療の全面解禁に反対して、一定のルールが必要とする立場から、特定療養費制度の見直しを進めております。

 そして、「厚生労働省と医療団体が混合診療解禁に徹底抗戦」「国民に問うべき混合診療の是非」「混合診療解禁反対で日医は総力戦で望む決意」等々の旗印の名の下に、国民的運動を展開して着々と成果を挙げようとしております。

 片や文部科学省は、国公立大学医学部に東洋医学の講座開設を指導していることから、平成16年度は、国公立大学では2単位から20単位の講座が医学教育に組み込まれております。東北大学医学部では、東洋医学概説60分、痛みと鍼灸60分、老年と鍼灸60分、和漢学90分、伝統医学120分、中国医学120分、漢方・鍼灸医学120分、漢方治療・鍼灸治療のEBM60分が医学教育として講座が組まれております。このような日本の医療界の動向を見ますと、今後どのような状況になるのか全く想像がつきません。

 この医療界の現状をふまえて鍼灸界を眺めてみますと、鍼灸師会は鍼灸単独法の制定はおろか医療団体としても認められておらず、保険診療に関しては、同意書の簡素化とは名ばかりで、同意書の締め付けは益々きつくなる傾向であります。その他無免許問題、カルチャーセンター並みの鍼灸師養成学校の乱立等々、課題が山積みにされています。学会は日本医学会の分科会に登録されておらず、認定制度も正常化されておりません。このことを考えてみますと、鍼灸診療を業としている鍼灸師は、大寒の夜空に晒されたように背筋がゾッとする思いや、大海に漂うような難破船のように哀れな感じが致します。

 我が国の鍼灸界の代表団体会長の年頭挨拶の中で「免許更新制度導入問題」を取り上げ、「免許更新は如何だろうか」と問いかけておられます。一人の副会長は混合診療解禁に対して「どうなろうと鍼灸師にとって医師の同意書は喉に刺さった骨であることには変わりない」と述べておられます。これは対岸の火事を憂いている一会員の発言で「リーダーとして何を為すべきか」「どのように打開すべきか」等のリーダーとしての牽引車的発言ではありません。

 今や鍼灸界は50年一日の如しで、日鍼会設立時の目的であった、鍼灸医師としての「単独法」「保険の団体協定」「日本医学会分科会」「無免許対策」等々に対し、何一つ前進の成果が見られておりません。この様な状況下において、私達鍼灸師は何を為すべきかを考える時ではないでしょうか。

 (社)全日本鍼灸学会愛知地方会では、一人でも多くの鍼灸師の将来を考え、学・術・道に関する自己投資をし、資質の向上を図り医療界の激動を乗り越え、生き残るための場としての計画を立てております。会員はもとより会員外の鍼灸師も受け入れておりますので、定例講習会に是非ご参加下さい。そして、(社)全日本鍼灸学会の認定制度に参加して、認定証取得鍼灸師となられることをお勧め致します。

 また、(社)愛知県鍼灸師会・(社)愛知県鍼灸マッサージ師会の奮起と、本会に対する力強いご協力を賜ることを切望致すものであります。