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不定愁訴班の紹介

不定愁訴班
不定愁訴班 班長 石神龍代
 
 昭和61年(社)全日本鍼灸学会研究委員会に不定愁訴班(黒野保三班長)が新設されると同時に愛知地方会研究部にも不定愁訴班(黒野保三班長)が新設されました。そして平成2年より私が班長を務めさせて頂いております。
 黒野保三先生は『鍼灸臨床の科学』の中の「不定愁訴症候群に対する鍼灸治療」の序論で「近年、社会構成が複雑多岐になり、人の生活にストレスが加わることが増大し、現代はストレス社会ともいわれるようになってきた。そして、不健康、半健康といわれる人が増加し、いわゆる不定愁訴を訴える人が多くなってきた。それに伴い、これらの人々が鍼灸院を訪れるケースが増加しつつある。
 しかし、いわゆる不定愁訴を訴える患者に対する鍼灸治療の有効性を定量的に見出すことは非常に困難であった。
 そこで筆者は、次のように考えた。
 (1)鍼灸院を訪れる患者の不定愁訴を訴える割合が増加している。
 (2)鍼灸師が独自に研究できる。
 (3)鍼灸師は誰でも研究活動に参加できる。
 (4)不定愁訴の治療に関しては近代医学の盲点であり、鍼灸治療が最も得意とする分野である。
 (5)病理学的徴候の有無にかかわらず不定愁訴を有する患者が多数存在する。
 (6)鍼灸医療の現場で、スクリーニングとして鍼灸治療の推移を定量的に見出すことができる。
 以上をふまえて、不定愁訴症候群に対する鍼灸治療の有効性を実証的に見出す目的で、1986(昭和61)年10月26日全日本鍼灸学会研究委員会に不定愁訴班を新設し、会員諸氏とともに研究活動を進めていくこととした。」と述べておられます。
 そして不定愁訴に対する鍼灸治療の実証医学的研究のための不定愁訴カルテ(健康チェック表、重症度判定基準、効果判定基準)を作成されました。
 この不定愁訴カルテを使用して今日まで数多くの臨床鍼灸医学的研究が行われてきました。
 ここでは健康チェック表と層別分類、重症度判定基準、効果判定基準について紹介します。
 尚、最も新しい研究としては去る6月11日に第53回(社)全日本学会学術大会(千葉大会)において「不定愁訴に対する鍼治療の検討-多施設での不定愁訴カルテの分析-」を発表しましたのでご覧頂きたいと思います。
 一人でも多くの人が不定愁訴班に入班され、研究活動に参加されますことを切望致します。

不定愁訴班 2

 

不定愁訴班 班長 石神龍代

 

 (社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部不定愁訴班では、平成17年度もそれぞれの班員に臨床鍼灸におけるひとつの客観的指標としての有用性が証明されている不定愁訴カルテを使用しての症例集積を行っていただくとともに、不定愁訴を生じてくるさまざまな病態について最新の文献による抄読会を行なっていきます。

 

 今年から学会に入会された方、これから開業される方、往診治療を行なっておられる方、不定愁訴カルテはすべての患者さんに活用できますので、是非、一緒に研究活動を行なっていきましょう。不定愁訴カルテの使用方法など詳しく初歩からお教えいたします。

(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部不定愁訴班研究日風景
(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部不定愁訴班研究日風景

不定愁訴班 3

 

不定愁訴班 班長 石神龍代

 

 1979年、当時の日本鍼灸医学会黒野保三専務理事・事務局長の発案により、鍼灸医学の科学的解明と発展を目指して鍼灸ワーキンググループが設置され、その後、1981年に現在の(社)全日本鍼灸学会が設立された時に研究委員会となりました。その中に1986年に不定愁訴班(黒野保三班長)が新設され、同時に愛知地方会研究部にも不定愁訴班(1989年まで黒野保三班長)が新設されて以来、不定愁訴カルテを使用して数多くの臨床医学的研究が行われてきました。

 鍼灸治療が医療として民衆に支持されるためには、鍼灸医学の基礎的研究とそれに基づいた臨床における鍼灸治療の効果を実証医学的に検証していくことは不可欠であります。

 その点で黒野保三班長の作成された不定愁訴カルテは来院した不定愁訴を訴える患者のみならず、すべての疾患の患者に使用でき、診断(病態把握)と治療方針の決定に有用であり、治療経過を定量的に把握していくことができ、また、その治療効果を実証医学的に検証できるようになっています。

 当班では、不定愁訴カルテを使用しての症例集積と、種々の不定愁訴に関連してくる病態について最新の文献による抄読会を行っております。

 よりよき鍼灸診療を目指して、人間性の確立、治療技術・技能の練磨に努め、そしてその治療効果の客観的評価のために、明日からの診療にすぐ活用できる不定愁訴カルテを使って一緒に研究していきませんか。


不定愁訴班 4

 

不定愁訴班 班長 石神龍代

 

 不定愁訴班が昭和61年に現名誉会長の黒野保三先生を班長として発足以来、多くの臨床医学的研究が行われてきました。

 今回は(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長の作成した不定愁訴カルテの有用性についてご紹介します。

 初診時に健康チェック表を使用することによって、来院患者の診断及び治療計画をより正確に立てることの可能性については「不定愁訴に対する鍼灸治療の検討」の中で、安藤由紀、黒野保三先生等が述べています。

 実際、初診時に健康チェック表をつけて頂くことにより、主訴以外の健康状態について、それを基にして、より詳細な問診を行うことができます。例えば、40番の「月経のとき、体の具合がわるい」、41番の「月経不順」にチェックがあれば、月経困難症を疑い、月経困難症状質問表を使用して経過観察が行えます。また、現在、約5人に1人の割合で睡眠に問題を抱えている人がいるといわれていますが、32番の「寝つきがわるく、眠ってもすぐ目をさましやすい」、33番の「寝つきはよいが、夜中や早朝に目をさましやすい」、35番の「朝起きたときに体がだるい、または午前中だるい」、38番の「夢をよくみる」にチェックがあれば、睡眠障害を疑うことができます。

 婦人科疾患班鈴木裕明班長等が、不妊症患者に対して不定愁訴カルテを使用して研究したところ、初診時における不定愁訴指数が高い人程、妊娠に至りにくい傾向にあること、また、不定愁訴に対する鍼治療の有効性や、不定愁訴の減少が妊娠に好影響を及ぼしていることが示唆されました。

 疼痛疾患班河瀬美之班長等は、腰痛と不定愁訴カルテとの関係について研究しており、腰痛の罹病期間が短期より長期の方が不定愁訴指数が高い傾向にあること、また、不定愁訴指数が重症化するほど、腰痛が改善しにくい傾向にあることが示唆されました。

 また、筆者等は、睡眠障害を訴えて来院した患者に対して不定愁訴カルテを使用して研究したところ、睡眠障害および睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性が示唆されました。

 ここに、不定愁訴カルテの健康チェック表と層別分類、重症度判定基準、効果判定基準について紹介しますので、是非、鍼灸診療にご活用下さい。


不定愁訴班 5

 

不定愁訴班 班長 石神龍代

 

 1986年(昭和61年)(社)全日本鍼灸学会研究委員会並びに愛知地方会研究部に、黒野保三先生を班長とする不定愁訴班が新設されました。それ以来、黒野保三班長作成の不定愁訴カルテを使用して多くの臨床医学的研究が集積されてきました。

 今年の6月に岡山で開催された第56回(社)全日本鍼灸学会学術大会に於いても不定愁訴カルテを使用した研究が3題発表されました。

「器質性月経困難症状に対する鍼治療の検討」山下 喜代

「慢性疲労症候群に対する鍼治療の一症例」角村 幸治

「腰痛に対する鍼治療の検討(6)ー腰痛と不定愁訴カルテについてー」皆川 宗徳

 また、来る9月2日に開催される第25回東海支部学術集会に於いても不定愁訴カルテを使用した研究が2題発表されます。

「東洋医学研究所®ホームページにおける健康チェック表の検討」吉田 昌弘

「頸髄症手術後の不安から来た不定愁訴に対する鍼治療の一症例」河瀬 美之

 現在、日本は65歳以上が14%以上を占める高齢社会であります。また、厚労省の発表によると、2006年の日本人の平均寿命は、女性85.81歳(世界第1位)、男性79歳(世界第2位)とのことです。

 これからますます未病治(第一予防)の重要性が叫ばれ、鍼灸治療の果たす役割が高まる中で、鍼灸院に来院したすべての疾患に使用でき、診断(病態把握)と治療方針の決定に有用であり、治療経過を定量的に把握していくことができ、またその治療効果も実証医学的に検証できる不定愁訴カルテの活用をおすすめします。

 ここに、不定愁訴カルテの記載方法、健康チェック表(日本語版、英語版、ポルトガル語版)について紹介しますので、ぜひ、鍼灸診療に活用下さい。