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まぼろしの専門鍼灸医認定制度

平成3年3月10日~平成4年9月20日

 

平成3年3月10日に開催された愛知地方会常任幹事会において、服部輝男教育部長より「専門鍼灸医認定制度」の実施が提案され、可決されてから、愛知県医師会、愛知県鍼灸師会との協力を得て、1年6ヶ月間専門鍼灸医認定制度を実施するため、役員一同尽力したが、開講式直前に諸般の事情により延期を余儀なくされ、開講式に集まった受講会員に涙をのんで頂いた。

ここにまぼろしとなった「専門鍼灸医認定制度」を後学のために記載する。

 

 

まぼろしの専門鍼灸医認定制度

(社) 全日本鍼灸学会愛知地方会教育部長 服部輝男

はじめに

20世紀末の平成12年は、1993年ウルグアイ・ラウンドで医療を含めた100種類の分野について自由化の約束をしたとの報に始まり、日本医師会の坪井会長が医療への「自立投資」概念の導入を与党などへ提言していく方針を表明したこと、WHOとWFASとの動向で、世界に中国の鍼灸を普及させ、統一的な試験制度を作り、国際的鍼灸医師を養成すると提言し、その準備を進めていること、そして (社) 日本鍼灸師会は国際標準規格(ISO.9000) の取得をしようと、「鍼灸院評価基準のファイル化」の作成、同意書の撤廃をはじめとする多くの諸問題について対処できぬまま揺れに揺れている。そして、その解決策も基本方針も立てられないまま今日に至っている。

これ等の問題を考えるとき、 (社) 全日本鍼灸学会が昭和61年4月に提案した「専門鍼灸医認定制度」や、平成4年10月4日より開催されるはずであった (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会の「専門鍼灸医認定制度」が心ない鍼灸師のために潰されたことが今さらながら悔やまれてならない。このまぼろしとなった「専門鍼灸医認定制度」が計画通り発足し、今日まで継続されていたならば、鍼灸師・医師・歯科医師に対して専門鍼灸医認定という同一の学術的基準ができることにより、鍼灸医学・鍼灸医療は国や社会に高い評価で認められたことであろう。そして、病・医院で鍼灸診療が行われる際に、専門鍼灸医の認定が問われ、医師・歯科医師が無差別に鍼灸診療を行うことができなくなると共に保険制度も導入され、専門鍼灸医認定者には同意書の提出は不必要となることと、多くの医師の入会により日本医学会への登録をも目標にしていた。

専門鍼灸医の認定を取得した鍼灸師は、医師・歯科医師と同一基準の保険診療ができたのである。そして鍼灸医師としての単独法ができ、鍼灸医師の養成機関も6年制の大学とし、定員も限定されることになって、現在のように鍼灸師の養成学校の乱立もなかったと思われる。

したがって、日本の鍼灸界では昨今苦慮している諸問題は正しく整理・整頓されていて、国内はもとより国際的にも鍼灸診療は医療の中で的確に対応ができ、何一つ動揺することなく平穏無事で、世界の鍼灸医学・鍼灸診療に対し日本がリーダーシップを取ることができたといっても過言ではない。

 

(社)全日本鍼灸学会専門鍼灸医認定制度設置の概要

昭和60年3月24日に開催された理事会・評議員総会において認定鍼灸医制度について検討することが決議され、昭和60年4月14日に (社) 全日本鍼灸学会に将来検討委員会が設置され、本会名誉会長黒野保三先生(当時本部総務部長)が中心となり、認定鍼灸医制度について約1 年間にわたり検討し、昭和61年3月23日に開催された理事会・評議員総会において可決されたものである。

この制度は (社) 日本鍼灸師会(担当:小杉喜一郎)、日本医師会・厚生省(担当:山下九三夫・代田文彦)、学校協会(担当:谷口健蔵)、文部省・鍼灸医学協会連絡委員会(担当:黒野保三)、日本学術会議・日本医学会(担当:堀田健)、認定鍼灸医制度小委員会・鍼灸教員養成機関(担当:西條一止)の各委員が各方面のコンセンサスを得て、総合的に計画し運営委員が選任され発足が可決されたものである。担当者の報告の中で、文部省は「高度なレベルで認定することが望ましい。」、厚生省は「ピンからキリまでであったものが、一定のレベルで線引きされることは評価する。」、医師会は「将来、医療の中で鍼灸診療を行う病院・診療所および医師が増加するようになる。その教育を (社) 全日本鍼灸学会が引き受けて頂くことは喜ばしい。」、「鍼灸師・医師の鍼灸医学に関する共通の土俵の場ができることは望ましい。」、鍼灸関係の各団体は「鍼灸師のレベルアップにつながり、社会から正しく認知され、鍼灸医師の地位が確立する単独法につなげたい。」等が報告された。 

 

専門鍼灸医認定講習会看板
専門鍼灸医認定講習会看板

ここまで準備が整った「専門鍼灸医認定講習会」が心ない鍼灸師のために保留となった

 

認定鍼灸医認定委員(認定委員)

 

委員長   東京大学名誉教授・(社)全日本鍼灸学会会長 山村秀夫

委 員   明治東洋医学院理事長・(社)全日本鍼灸学会副会長 谷口健蔵

     (社)全日本鍼灸学会副会長 黒須幸男

      東京大学名誉教授 芹沢勝助

      前(社)日本鍼灸師会会長 木下晴都

      大阪医科大学教授・日本良導絡自律神経学会会長 兵頭正義

      日本鍼灸良導絡医学会会長 和田清吉

     (社)日本鍼灸師会会長 小川晴通

      経絡治療学会会長 岡部素明

      (社)全日本鍼灸マッサージ師会会長 関野光雄

      (社)全日本鍼灸学会理事 出端昭夫

      筑波大学教授 西條一止

      東洋療法学校協会副会長 後藤修司

事務局長 名古屋市立大学医学部研究員・(社)全日本鍼灸学会総務部長兼事務局長 黒野保三

庶 務    石神龍代、北出利勝、堀 茂、木下 滋

経 理    奥田冨男、井上豊彦、仲田欣司

 

 

以上のように精度が高く各方面の理解を得て理事会・評議員総会で決議されたにもかかわらず、認定委員であり、理事会・評議員会の経過を熟知しているはずの常務理事1名と一部の鍼灸師が、第一回認定委員会の場において反対という心ない行動に出たことから、専門鍼灸医認定制度が留保となったことは誠に不名誉なことであり残念なことである。

その後、平成元年に入り鍼灸界は揺れに揺れ、(社)日本鍼灸師会は役員問題で、愛知県内の鍼灸業界は(社)愛知県鍼灸師会・(社)愛知県マッサージ師会・(社)愛知県鍼灸マッサージ師会(保険取扱専門組合)三団体の談合により、新しく業界に入会する若者に不信感を抱かせたり、保険組合も第二組合とか第三組合ができる等、異様な雰囲気をかもしだしていた。

そこで、(社)全日本鍼灸学会愛知地方会が若者の業界に対する不信感の受け皿となって、心ある鍼灸医師を志す若者の教育と、医師集団の中で社会のニーズに応え鍼灸診療を行う医師の鍼灸医学教育の場とすることを目的として、平成2年3月の愛知地方会常任幹事会に教育部として「専門鍼灸医認定制度」を提案し可決された。「専門鍼灸医認定制度」実施に向けての協力を、愛知県医師会に対しては名誉会長黒野保三先生に、愛知県鍼灸師会に対しては会長所集次先生に担当して頂いた。教育部は「専門鍼灸医認定制度」の準備作業を行った。約1年6カ月間にすべての準備が整い、いよいよ平成4年10月4日(日)からスタートとなった時、またしても一部の鍼灸師の反対運動が行われ、(社)全日本鍼灸学会会長山村秀夫先生に抗議文が出された。名誉会長黒野保三先生は胆嚢摘出の手術を受け名古屋市立大学病院に入院中であったために、断腸の思いで「専門鍼灸医認定制度」の講習会の発足を断念した。当時、所集次会長の報告によると『反対の理由を井垣博夫先生は本部で留保となった「専門鍼灸医認定制度」を愛知県で認めることはできない』と説明した。

 

おわりに

21世紀に向けての鍼灸医学・鍼灸診療・鍼灸医師像について、30年にわたり、名誉会長黒野保三先生が提唱してきたことは、現在に至ってようやく国際的規模で大きな波となって押し寄せて来ている。

改めて (社)全日本鍼灸学会愛知地方会の実績と名誉会長黒野保三先生の提唱され続けてこられた教えを振り返り、新しい鍼灸界の構築を計り、鍼灸医学・鍼灸診療・鍼灸医師の位置付けに向けて、会員諸氏と共に邁進して行きたいと願うものである。

ここに、まぼろしとなった「専門鍼灸医認定制度」の資料を後学のために記録として残し、将来に向けての参考とすることとした。

 

 

経緯を説明する愛知地方会名誉会長黒野保三先生
経緯を説明する愛知地方会名誉会長黒野保三先生

胆石の手術のために入院されていたが無理を押して名古屋市立大学の会場に出向き、心ない鍼灸師に反対されたために涙をのんで「専門鍼灸医認定講習会」が保留になった

開講式に集まった会員
開講式に集まった会員

「(社)全日本鍼灸学会愛知地方会専門鍼灸医認定講習会」開講式に集まった会員は残念な気持ちで保留の経緯説明に聞き入っていた

名古屋市立大学 渡 仲三 名誉教授
名古屋市立大学 渡 仲三 名誉教授
名古屋市立大学医学部第一生理学教室 鈴木 光 教授
名古屋市立大学医学部第一生理学教室 鈴木 光 教授

 

昭和61年3月21日

専門鍼灸医認定制度(仮称)趣意書

 

1972年、中国における鍼麻酔の発見以来、わが国はもとより、国際的に鍼灸治療の有効性が急速に明らかにされるようになってきた。

わが国では、昭和23年に設立された日本鍼灸学会、昭和26年に設立された日本鍼灸治療学会および (社) 全日本鍼灸学会の鍼灸診療に関する研究業績はかなり集積されてきた。そして、鍼灸医学の教育機関も鍼灸大学院が文部省より許可され、ますます鍼灸診療の高度化が問われるようになってきた。

近年、わが国の一般社会においても、鍼灸診療が医療の中で応用されることが望ましいといわれるようになり、多くの医療機関で鍼灸治療を行うようになってきた。

現実に新鍼会が行った医療機関における鍼灸治療の実態調査では、鍼灸診療の担当者が必ずしも鍼灸師だけではなく、医師も鍼灸診療を行っているという結果がでている。また、中国を除き、世界で鍼灸診療を行う医師は三十万人に達するという。そして、オーストラリアでの医学部内の鍼灸学科の設立が報じられるなどアジア以外の各地で鍼灸に対する関心が深まっている。これは、要するに日本はもとより国際的に医療としての鍼灸診療が始まろうとしていることを如実に現わしている。ところが、一方で医療行政に携わる日本の厚生省、医療の中心となっている医師集団などの、鍼灸師集団に対する信頼感は必ずしも高いとはいえない。要するに「ピンからキリまでだからね。」というのがいつもの言葉である。

今、疑問視されている鍼灸師集団がその疑問を払い、世間を納得させるにはどうしたらよいのか。「私は、有資格者です」と本人が申告しても、それだけではなかなか世間は納得しないのが通常である。何か客観的データをつけて世に示さなければならない。

一方、鍼灸診療を行おうとする医師・歯科医師にも鍼灸医学の教育が必要であり、鍼灸師・医師・歯科医師共通の鍼灸医学教育機関が必要であろう。このような時代にあって資質向上への道を歩もうとしている多くの鍼灸師の努力を公に認めさせ、社会の新しいニーズに沿った鍼灸医師像を国民へ提供するために、 (社) 全日本鍼灸学会はここに専門鍼灸医認定制度の設置を提案するものである。

 

 

専門鍼灸医認定制度は、鍼灸診療を医療の中で、パラメディカルではなく高度に位置づけるとともに、社会のニーズに応え高い評価を得る目的のために次のような基準を原則とする。

1. 精度の高い基準にしなければならない。したがって、その基準は原則として文部省大学院設置基準の大学院修士終了以上に準ずるものとする。

2. 「医療の中での鍼灸診療」と位置づけるため、鍼灸診療を行う医師及び歯科医師にも専門鍼灸医認定を取得するよう働きかけなければならない。

3. 既存の鍼灸師のうち経験年数20年以上の者については、できるかぎり専門鍼灸医認定が取得できるよう配慮すべきである。したがって、数年間は専門鍼灸医認定制度特別措置制度を設けることが肝要である。

以上

 

 

専門鍼灸医認定基準

特別措置認定基準

 

専 門 鍼 灸 医 認 定

一般

専門鍼灸医の認定は、本会の会員で、はり師及びきゅう師、医師、歯科医師のいずれかの免許を有する者で、専門鍼灸医学講習会及び鍼灸医学臨床研修を終了し、学科試験に合格した者

 

全部免除者

1) 鍼灸学博士、医学博士、歯科学博士のいずれかを有し、学会の学術大会に3回以上参加した者で、学会誌に掲載された論文のうち学会 の認定委員会が認めた単著(筆頭論文を含む。)2編以上の業績を有する者

2) 教育職員免許法に規定する理療科教員免許を有する者又は厚生大臣の指定したはり師又はきゅう師教員養成機関卒業者で、学会の学術大会に5回以上参加した者で、学会誌に掲載された論文のうち学会の認定委員会が認めた単著(筆頭論文を含む。)2編以上及び共著3編以上の業績を有する者

3) 鍼灸学士を有し、かつ、学会の学術大会に10回以上参加した者で、学会誌に掲載された論文のうち学会の認定委員会が認めた単著(筆頭論文を含む。)2編以上の業績を有する者

4) 学会の学術大会に15回以上参加した者で、鍼灸医学に関する著書、総説、原著、短報、症例、論説のうち、学会の認定委員会が認めた単著(学会以外の論文も含む。)2編以上及び共著3編以上の業績を有する者

 

一部免除者(講習)

鍼灸学士を有しかつ学会の学術大会に5回以上参加した者で、学会誌に掲載された論文のうち学会の認定委員会が認めた単著(筆頭論文を含む。)2編以上の業績を有する者

 

専門鍼灸医認定

 

全部免除者

学会の会員又は会員以外の者で、はり師及びきゅう師、医師、歯科医師のいずれかの免許を取得した後、20年以上の経験を有し、下記の基準に相当する者

1) 鍼灸医学に関する総説、原著、短報、症例報告、論説等(学会以外の論文も含む。)のうち、学会の認定委員会が認めた業績を有する者

2) 厚生大臣の指定する教員養成講習会を修了し、普通科教員資格又は専科教員資格を取得した者

 

一部免除者(講習)

 

1) 学会の会員又は会員以外の者で、はり師及びきゅう師、医師、歯科医師のいずれかの免許を取得した後、30年以上の経験を有する者

2) (社) 日本鍼灸師会が行った鍼灸臨床研修指導者講習会を修了した者、又は厚生大臣指定講習会を修了した者で、20年以上の経験を有する者

 

レポート提出

学会の会員又は会員以外の者で、はり師及びきゅう師、医師、歯科医師のいずれかの免許を取得した後、20年以上の経験を有する者

 

 

専門鍼灸医認定模式図(案)
専門鍼灸医認定模式図(案)

平成4年9月20日

 

専門鍼灸医認定講習会

受講者各位

(社) 全日本鍼灸学会愛知地方会

会  長  所  集次

教育部長  服部 輝男

 

(社) 全日本鍼灸学会愛知地方会

専門鍼灸医認定講習会要綱

 

謹啓

爽秋の候、諸先生方には益々ご清祥の御事と拝察致しお慶び申し上げます。

さて、先般ご案内致しました専門鍼灸医認定講習会の開催に向けて鋭意準備を進めて参りましたが、諸先生方の御協力によりまして、いよいよ10月4日開講する運びとなりました。

つきましては本講習会を運営していくための専門鍼灸医認定委員会が9月15日の教育部会で設置されました。

今後は下記要綱によりまして本講習会を運営致してまいりますので宜しくお願い申し上げます。

敬具

 

1.名称

   (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会専門鍼灸医認定講習会

2.主催

   (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会

3.後援

  (社)愛知県鍼灸師会

  (社)愛知県医師会

4.実施期間

  平成4年10月4日(日)から平成6年10月2日(日)まで(第1,2,5 日曜)の51日間

5.会場

  名古屋市立大学医学部第一臨床講義室

  〒458 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番 ℡(052) 851-5511

6.日程及び時間割(別紙参照)

   午前9時~午後0時10分(4単位)

   午後1時~午後4時10分(4単位)

    (科目及び単位数、科目概要:別紙参照)

7.受講料:70,000円

   (テキスト代、専門鍼灸医認定試験及び登録料は含まず)

8.振込み方法

 ①振替用紙にて9月末日までに納入のこと(開講日当日振込み領収書を必ず持参のこと)

 ②開講日当日の納入も可

9.専門鍼灸医認定講習会の運営

※専門鍼灸医認定委員会

委員長    黒野 保三

副委員長    所  集次 奥田 冨男

実行委員長   石神 龍代

副実行委員長 服部 輝男 豊田 勝良 山田 鑑照 加納 俊弘

委  員   中村弘典 河合雅人 田中法一 丸山善己 河瀬美之 山田 耕

      皆川宗徳 山川成彦 絹田 章 甲田久士 山崎武男 田中良和

      加藤茂樹 福田裕康 牧 仁子

10. 専門鍼灸医認定委員会事務局(問い合せ先)

   (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会事務局

   〒464 名古屋市千種区春岡2-23-10 ℡(052) 751-9144

 

追伸

※10月4 日は8 時30分より受付を開始致しますのでお早目にお出かけ下さい。その際、認め印を必ずご持参下さい。

※開講式は9時から9時30分まで行います。本講習会についての重要なお知らせがありますから必ずご出席下さい。

※会場へは公共交通機関を利用してお出かけ下さい。

 

No.1

 

(社) 全日本鍼灸学会愛知地方会

専門鍼灸医認定制度趣意書

 

会  長 所  集次

教育部長 服部 輝男

 

近年、鍼灸診療が医療の一端として大きく社会に取り上げられるようになってきました。そして鍼灸院を訪れる患者も増加しつつあります。しかし、民衆の鍼灸診療に対する視点も鋭くなり、鍼灸院の質を明らかにする必要があるのではないかとの声が日増しに高くなりつつあります。

例えば、鍼灸診療を専門としている鍼灸院と、マッサージ・指圧等を主として行い補助として鍼灸を使用している鍼灸院の区別等であります。端的に言えば鍼灸診療の格を明らかにしてほしい等の声が巷にとりざたされています。

このまま放置しておれば、せっかく社会に認知されつつある鍼灸診療が再び退化する恐れが生じます。したがって、少なからず鍼灸診療を専門として行っている鍼灸院であることを社会に明記する義務と責任が生じてきました。また、医師・歯科医師集団の中で鍼灸診療を行うものが急速に増加しようとしている現状をふまえて、愛知地方会では愛知県医師会、愛知県鍼灸師会と合意のうえ高度な専門鍼灸医の認定制度を設置するものであります。

以上の趣旨をご理解頂き一人でも多くご参加頂くことをお願いする次第であります。

 

No.2

 

(社)全日本鍼灸学会愛知地方会

専門鍼灸医認定講習会科目及び単位数

 

医学概論    1単位   15時間

基礎医学概論  8単位  120時間

解剖学  (40時間)

生理学  (40時間)

生化学  (14時間)

病理学(20時間)

衛生学  (6時間)

東洋医学概論  6単位   90時間

臨床検査学

 講義・演習 1.2単位   18時間

診断学

 講義・演習 3単位   45時間

薬物概論  1.2単位   18時間

現代鍼灸学  2単位   30時間

臨床心理学  1単位   15時間

臨床医学英語 1単位   15時間

総合人間学  1単位   15時間

健康科学 1単位   15時間

 

26.4単位 396時間

 (1単位=15時間) (1時間=45分)

 

No.3

 

(社)全日本鍼灸学会愛知地方会

専門鍼灸医認定講習会科目概要

 

1. 医学概論

医学とは何か、医療とは何かを問い、医療の中における鍼灸の位置、医療人としての鍼灸医師の在り方について考える。

2. 基礎医学概論

解剖・生理・病理・衛生の基礎医学については鍼灸師の養成過程で600 時間近い講義を受けている。しかし、更に専門性を高めるために、体表解剖学(生体触擦解剖学)、病態生理学(臨床解剖学)、生化学などを通じて病状把握に関する基礎能力を養う。 

3. 東洋医学概論 

古典鍼灸学

現在の鍼灸師養成課程においては、鍼灸の古典について指導する時間的余裕がない。そこで本講習会においては古典読解の基礎、古典鍼灸学概説(代表的鍼灸古典の学習)及び素問・霊枢・難経など特定の古典をひとつ取り上げ精読する。

4. 臨床検査学

卒前に学んだ電気的・理化学的検査法等を更に深め、日進月歩の検査技術、検査法を理解し、医療の現場より提出される検査結果の意義づけができるまでにする。鍼灸治療を行う上で関連があり、治療効果の客観性を重視できる。

5. 診断学 

卒前に学んだ診察概論、臨床各論を基とし、更に上記の学習に加え、症状を訴える患者を東洋医学的、西洋医学的に診断し、鍼灸治療の適否、施術期間等についての鑑別診断が的確にできるようにする。

6. 薬物概論

医療の中で特によく使われている薬物についてその作用機序(薬理作用)を中心に学び、副作用とそこからくる愁訴についても理解し、治療を加える能力を高める。漢方薬については、代表的な処方についてその構成成分、運用原則、治則、適応、禁忌、服用法等について学び、鍼灸との関連を考える。

7. 現代鍼灸学

電気生理学を基礎に、M.E.(メディカル・エレクトロニクス)、電気治療器学を学習し、鍼灸に係るあらゆるタイプの治療法を修得する。鍼灸理論、経穴学についても現代的医療面から考察する。

8. 臨床心理学

患者心理を把握するための基礎を学ぶ。臨床心理療法の概略を知り、その適応について学ぶ。

9. 臨床医学英語 

医療の現場でよく使われる医学英語(略語)を学び、カルテの判断ができる基礎を養うとともに、英文文献の読解力の基礎を養う。 

10. 総合人間学 

全人的医療の実践者としての「哲学する鍼灸師」を目指し、「人間」とは何かについて、自然科学的、人文科学的、社会科学的等の総合的考察ができるような基礎的考え方を学ぶ。

11. 健康科学

 

病気を知るための科学としての医学ではなく、「健康」とは何かを考える科学を学ぶ。「健康」とは何かを、医学的、生物学的、社会学的、経済学的等の観点から捕らえ、「健康」を阻害するものは何かを考え、健康保持、健康増進の科学の基礎を学ぶ。